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イタリア ボローニャ便り 6便 プリモピアット リゾット

   

 今回は、プリモピアットのお米を使った料理について考察してみます。
 我が故郷三原の海の幸、山の幸とともに食べたお袋のおむすびの味に、敵うもの無し。
 まず、そのことをここで明言しておきたいと思います。

 日本で有名なのは、ミラノ風リゾットなどがあります。
 真っ白なテーブルクロスの上にワングラス、フォークとナイフの銀色を侍らせ、
 白い磁器の上に乗って登場する。”サフラン風味ミラノ版固茹でおじや”と訳せばある
 程度、正解に近い答えではないかと思われます。

 リゾットには色々な種類があります。山海の珍味で味付けし洗練されたレシピは数え
 きれません。カルチョフィー(*1)、ポルチーノ、アスパラ、トレビジャーナ(*2)。
 変わり種では苺などもあります。もちろん!米はリゾット用をお使い下さい。
 日本人の海外生活が長くなると食生活は…。ある程度のことは我慢と諦めるか、または
 発明工夫で凌いでいきます。そこには我が民族の精神と、胃袋の涙ぐましい葛藤が見られ
 ます。無漂白のパンとビールでぬかみそもどきを作るとか、日本からのお土産の納豆を
 丹念に増殖するとか、それは涙ぐましい限りです。
 しかし根源的なところが絡んでくるとさじを投げることになります。
 投げ出せない人は得てして精神不安定になりがちです。留学生当時、よくこんな外国人を
 見ました 。

 ここで取り上げるべきは、日本に関係の深いミラノです。決定的に異なるのが米の種類で
 す。ミラノの米を使わないと本来のリゾットは完成されませんが、この米でお袋の味を再
 現しようものなら、苦い経験をしてしまいます。
 リゾット用の米で炊いたご飯は、なんと もパサパサして、チャーハンくらいにしかなり
 ません。またニオイ、いや特有の風味もあります。これは国の事情を察して尚かつ、好み
 の問題と言うべきかもしれませんが。

 そこでバブルの企業戦士は、精神と胃袋の均衡を保つ必要に応じて、ミラノ近郊の水田地
 帯にササニシキ、コシヒカリを持ち込んだのです。ある時ミラノ在住の友人でJAL家庭
 (ご主人が貨物屋さん,奥さんが元キャビンアテンダント)でご馳走になった時は只ただ
 一途に家庭の味でした。私は緩みかけた涙腺の向こうに、光と錦を見て故郷を思い浮かべ
 ましたが、どちらがヒカリかニシキか残念ながら区別できませんでした。
 その時は、1か月のヨーロッパ貧乏旅行を終えてボローニャへの帰途であり、つい居心地
 の良さと家庭の味に甘えて長居をしてしまいました。
 今から考えれば、その時はかなり不 安定であったように思えます。
 実際その年から3年半帰国しませんでした。

 また、この米が当時ミラノ在住の企業戦士諸兄のご家族を慰めたのは、疑いの余地があり
 ません。ここに根強い日本人のご飯に対する執着があります。まさに根源的なもので、そ
 こに既成概念が生まれてきます。私の制作生活上の怠惰に次ぐ大敵です。多分、外国生活
 をしているからある程度は許されるのかもしれません。そして自分がアーティストである
 ということが大きく関係しているのは事実です。何々はこうあるべきだ!このたぐいの考
 えが全ての芸術に対して感性を圧し曲げてしまい、偏見を生み差別に繋がって行きます。
 固定されてしまった考えの中では発想は生まれてきませんし、美味しいものも、美しいも
 のも見落としてしまいます。驚きの無い生活は退屈です。芯のある固茹でご飯もおいしく
 頂ける柔軟性を持てば、デザートに出てくるお米のケーキも、おっとり笑っていただける
 と思います。



(*1)カルチョフィ:食用のアザミ花弁の芯と花びらの付け根部分を食用にします。
(*2)トレビジャーナ:独特の苦みと渋い赤紫色の野菜。