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イタリア ボローニャ便り 17便
         セコンドピアット シチリア風マグロの刺身

 

 
 

 

 最近発見したボローニャのトラトリア(*1)は、オーナーシェフがシチリア島出身の
 経済学の博士号を持っています。
 物心ついたときから料理好きで、会社勤めの傍ら専門学校に通ったもののドロップアウト
 し、レストランを点々として修行に励んだそうです。
 さぞや、ご両親の嘆きが遥かシチリア島から伝わってきそうです。

 彼の入れ込みようは少し変わっています。お昼時はChiuso!(閉店)なのです。
 腑に落ちず尋ねてみると、なんと他店が商い中に新しいメニューの創作を楽しんでいる
 とのこと。その分メニューの品数を適当に減らし、コストパフォーマンスをしています。
 シェフ直々に「どうだい、そのパンの味は?」(*2)と聞かれました。
 その時私も、自然酵母(*3)のパン作りに熱中していたせいで話が合いました。

 彼の出身地シチリア島は、マフィアの発祥地で、世界的に有名です。
 彼らの気質は常に誇り高く、イタリア的な義理と人情の世界に今でも生きている土地柄
 です。
 私も何度か訪れたことがあります。

 今回のセコンドは、彼の創作と言えるシチリア風マグロのカルパッチョ。
 以前からシチリア島は伝統マグロ漁で有名でしたが、1984年、シチリアの州都パレルモ
 で味わったマグロのトロは、強烈の一言でした。
 まず値段の安さは1キロの塊を当時で900円位だった!と記憶しています。
 街の中央市場に集まった生鮮食料品、南国の匂い立つ花々、野菜、魚、甘いお菓子の匂い
 が立ちこめる食いしん坊の楽園です。
 その中でもひときわ目を引いたのが、真っ二つに切られ売り台に転がっていた魚雷のよう
 なマグロです。

 私は、「その脇腹の脂の乗ったピンク色のところを下さい」と手を広げてみせました。
 おじさんはイタリア語に似た聞き取れない言葉で「油ばかりで焼くと食べるところが
 無くなるから、赤い方を買ったら?」と親切に言っているように理解しました。
 「とにかくその脂身を」とお願いしているところへ若いお兄ちゃんが登場してきました。
 どうも彼は、以前遠洋で日本のマグロ船団に乗り組んでいたようで、日本人達は、
 その脂身を喜んで、しかも生で食べると説明していました。
 おじさんは不思議そうに眺めながらも、とにかく凄い包丁で中トロを切ってくれました。
 なんとかマグロを驚異的な値段で買い受けてホテルに帰り、さっそく醤油とワサビと、
 ご飯がないのでパンの白身を握りしめて食べました。
 その時の味は、やはりひと味違い興味尽きぬ味でした。

 話を元に戻して、フェランチェスコ(シェフの名前)のセコンドはマグロの赤身。
 もちろんシチリア産マグロの赤身を刺身風に厚めに、そして新鮮なハーブ(タイム、
 野生の細ねぎ、セロリのみじん切り?)と、エクストラヴァージンオリーブ油と塩。
 シチリアの海辺では、どこでも手に入りそうな食材です。
 一番大変なのは活きの良いマグロ。そしてソレを生で食べる勇気でしょう。
 数年前までイタリア人にとっては両方とも大変だったはずです。
 このグローバル化がもたらした影響は、私にもスケッチ旅行で訪れたシチリアを思い出
 させてくれました。
 その味は、ここに書く迄もありません。
 その証拠に、日本から来た友人達をも充分楽しませてくれたと思います。

 

 (*1) レストランより少しくだけた感じの食堂。
 (*2) パンは、そのレストランを表す味です。よほど気を使うレストランでない限り、
     自分のレストランでパンを焼くことはありません。
 (*3) 特にパン酵母の中でも自然発酵酵母は,発酵に時間と手間がかります。
     焼き上がったパンは、本来の味と香りを持っています。
     また自然酵母が生きています。